ワルシャワ郊外の街セロック。14歳の少女オラは、自閉症の弟ニコデムと、飲酒問題を抱える父親と暮らしている。母親は別居しており、他の男性との間に赤ん坊がいる。大人を当てに出来ず、1人で弟の世話をし家事をこなすオラの生活は苦しい。彼女は、弟の初聖体式を成功させようと苦心していた。監督はアンナ・ザメツカ。
 ある少女とその家族を追ったドキュメンタリー。カメラと被写体との距離(物理的な距離でもあり雰囲気的な距離でもある)がごく近く、よくここまで撮影させてくれたなと唸った。多分、普通だったら10代の子供が他人に見せたくないであろう部分も撮られている。被写体であるオラたちと監督との間に相当な信頼関係があるとわかるが、撮影の1年半前くらいからゆっくり時間をかけて準備していたそうだ。撮影後も交流は続いていると言う。ドキュメンタリー映画を作る際、被写体の人生のどこまで立ち入っていいのか、被写体との関係性に撮影後も責任を持てるのか、悩む所なのではないかと思う。特に本作のように、相手が生活に困難を抱えている子供である場合は。その困難を見世物のようにしてもいいのか(自分たちが助けられるわけでもないのに)ということを、映画を見ている側も意識せずにはいられない。とは言え、オラは自分の意思で自分と家族をカメラにさらしている。誰からも守られていると実感できない、自分たちのような者がここにいると主張し続けているように思えた。
 一家の日常生活の中でオラが負担するものが大きすぎ、見ていてなかなか辛い。毎日の家事に加え、ニコデムの学校での時間割を確認したり、着替えや勉強を促したりと、自分の勉強や遊びはいつやっているんだろうというくらい(公営住宅の転居希望までオラに書かせているのには驚いた)。彼女の生活には、両親のフォローが殆ど見受けられないのだ。父親は失業中でアルコール依存の問題を抱えているようだし、母親は電話をしてきても自分の話ばかりだ。ニコデムが自閉症であることも加え、本来なら施設で生活した方がよさそうな雰囲気なのだが(実際、福祉職員にそういうことを言われているシーンがある)。カウンセリングで「困ったことはない?」と聞かれたオラは「別にないです」と答えるが、そんなはずないだろう。困っている所を見られて家族がばらばらになるのが嫌なのだ。それでも家族であることへの望みを捨てられないんだなと切なくなる。

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