フリオ・コルタサル著、寺尾隆吉訳
 兄妹が住む大きな古い家を、何者かが遅い少しづつ侵略していく『奪われた家』。死んだ妻のイメージをそこかしこに追い続ける『天国の扉』。コルタサル自ら真の処女作と称した『動物寓話集』。全8編を収録した短編集。
 コルタサルは昔長編を読もうとして挫折した記憶があるのだが、改めて短編にトライしてみたら面白いし読みやすかった!新訳ありがとう・・・。兄妹が侵略に対して対抗の意思を持たない『奪われた家』は不条理ホラーのようで怖い。理不尽な悪意にさらされるという点で『バス』もちょっと似ているが、こちらはその悪意から逃げのびる話。ホラー風味で言えば『遥かな女 アリーナ・レエスの日記』には着地点がそこか!というショッキングさと、運命のようなものから逃れえない恐ろしさがあった。着地点というか集約点がわりとかっちり設定してある、構成の上手さを感じる作品が多い。私の一推しは表題作でもある『動物寓話集』。子供の世界の瑞々しさと不安さの表現が巧み。


八面体 (フィクションのエル・ドラード)
フリオ コルタサル
水声社
2014-08-01