カリン・スローター著、出水純訳
 1974年のアトランタ。3か月間で警官4人が殺害される事件が起きていた。どの死体もひざまづき額を撃たれるという処刑スタイルのもので、犯人は“アトランタ・シューター”と呼ばれていたが、証拠は何もなく容疑者も上がっていなかった。5人目の被害者が出たが、今までとは殺害スタイルが違う。女性警官マギーは捜査に加わりたいと熱望するが、男性社会の中ではまともにとりあってもらえず、独自に調べ始める。
 警察小説として、70年代を描いた小説として、この時代・場所で女性として生きることがどういうことか描いた小説として、とても面白かった。警察という組織の体質に加え土地柄もあるのか、人種差別、女性差別が厳しい。女性が警官になるということ自体が(ことに警察内部から)白眼視されていた時代だ。マギーが男性同僚から受けるセクハラは耐え難いし、母親や叔父から受ける警官を辞めろというプレッシャーもきつい。特に母親と叔父とが違った形でマギーを縛ろうとする様には怒りが沸いてくる。一方、育った環境からして警官らしからぬ新人警官ケイトの下剋上的奮闘は清々しい。冒頭とラストの対比にはぐっとくる。女性達の共闘に対して、白人男性警官らによる警察という組織の異形さが浮かび上がってくる。

警官の街 (マグノリアブックス)
カリン・スローター
オークラ出版
2015-12-25


あなたに不利な証拠として (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ローリー・リン ドラモンド
早川書房
2008-03-01