サミットの会場として、東京湾に建てられた巨大施設「エッジ・オブ・オーシャン」が選ばれた。しかし数日後にサミットが迫る中、エッジ・オブ・オーシャンで大規模爆破事件が発生する。爆破当日は公安警察による安全確認調査が行われており、その中に警察庁の秘密組織・通称ゼロに所属する安室透(古谷徹)の姿もあった。コナン(高山みなみ)は爆破事件がサミット当日ではなく事前に起きたことに違和感を抱く。一方、事件現場から毛利小五郎(小山力也)の指紋が発見され、小五郎は容疑者として逮捕されてしまう。青山剛昌の大ヒット漫画のアニメ化作品だが、劇場版は22作目。監督は立川譲。
 アバンでの情報の詰め方、提示の仕方が密度が高く整理されており、その後の伏線となる要素をほぼ紹介している。作中の情報量がかなり多くて、おそらくシリーズ内でも対象年齢がかなり高めのストーリー(公安組織の解説をこんなにやる全年齢向けアニメってあります・・・?)。その傾向に合わせてなのか脚本家・監督の作家性なのかはわからないが、舞台となる場所はかなり現実の東京に近く、ちゃんとロケハンしている様子がわかる。コナンシリーズって、実在の場所が出てくることもあるけどそこまでこだわっていないというイメージだったので(まんま出てくるのはそれこそ警視庁くらいか)、日本橋の風景等新鮮だった。
 また、作画的な見せ場がキャラクターの表情・動きよりもビルやドローン、車両等、無機物の動きに集中しているように思えた。日本の実写映画ではなかなか見られない(技術的にというよりも公道での撮影があまりできないからだろう)ケレン味たっぷりのカーアクションを満喫できるのは楽しかったしお腹いっぱいになる。ケレン味どころか無茶苦茶で、安室が実はかなりヤバい人であるというキャラクター演出にもなっている。
 今回は安室をクローズアップした作品なので、彼が所属する公安が活躍するストーリーでもある。公安がかっこよく活躍する作品というのはあまりないので、そういう面でも新鮮だった。ただ、かっこよすぎるのもちょっと問題だなとも思った。終盤、ある人物に「見くびるな」と一喝されるが、その見くびりは、彼らが一般市民をどのように見ているかということに他ならない。犯人は正義の名の元に犯罪に手を染めるが、そのメンタリティは安室たちとそんなに変わらないように思える。正義、国という漠然とした大きいものに尽くすことの危うさには、もっと言及しておいてもいいんじゃないだろうか。特に本作はそもそも「名探偵」コナンシリーズ。名探偵は、大義が時に見捨てる個人の為に闘ってほしいのだ(個人的には)。