ロバート・ロプレスティ著、高山真由美訳
 ミステリ作家のシャンクスは、度々不可思議な事件に巻き込まれる。その度に推理を披露し、時には見事解決に導くが、「事件を解決するのは警察、僕は話を作るだけ」と宣言している。起こったかもしれない犯罪の予知や防犯、盗難事件から殺人事件まで、バラエティに富んだ連作短編集。
 題名には「お茶を」とあるが、お茶よりもお酒の方を好み荘(そして妻に怒られそう)な主人公シャンクス。シャンクスの本名はレオポルド・ロングシャンクスなのだが、妻もいまだに名字の短縮形であるシャンクスの名前で呼んでいる所がちょっと面白い。結婚前の呼び方をそのまま使っているのかな等と、シャンクス夫婦の若かりし頃への想像も膨らむ。短編ミステリ集だが、シャンクスが想像の中だけで事件を想定・解決する安楽椅子探偵的なものから、パズルミステリ、クライムノベル風、オーソドックスな本格ミステリ等、ミステリのあり方のバリエーションが豊富で、連作のお手本のよう。主人公が作家ということで、作家視点の読者や出版エージェントに対するうっすらとした毒も混じっている。とは言え概ねほがらかに気楽に読める好作。各章の後に著者によるコメントが付けられているのも楽しい。

日曜の午後はミステリ作家とお茶を (創元推理文庫)
ロバート・ロプレスティ
東京創元社
2018-05-11


ミステリ作家の嵐の一夜 (創元推理文庫)
G・M・マリエット
東京創元社
2012-10-30