ジョナサン・エイムズ著、唐木田みゆき訳
 元海兵隊員のジョーは、人身売買された女性の救出を専門とするフリーランサー。ある日、仲介役のマクリアリーから、誘拐された上院議員の娘の救出という案件が入る。娘が働かされている娼館を見つけ、首尾よく侵入したものの、思わぬ邪魔が入る。娘の誘拐の背後には更に大きな陰謀があった。
 私がすごく好きなタイプの小説だった!1行目から香り高く味わい深い。ストーリーは殺伐としており文章はクールだが、訳者解説でも言及されているように所々に乾いたユーモアがある。文章のちょっとしたところにぐっとくる。これは翻訳もいいんだろうなぁ。
 ジョーの振る舞いは徹頭徹尾真面目なのだが、バカ真面目感がある。徹底したプロとしての、時に融通が利かないようにさえ見える振る舞いがそう感じさせるのだ。もちろん、身を守ることを考えてそういう行動になっているのだが。ジョー当人は自分はちょっと狂っている、まともではないが何とかまともに見せているという自覚を持っている。彼の行動は暴力的だが、ある部分では自分をまともさに留め置くためのもの、彼にとっての良識の発露でもあるように思える。というよりも、彼以外があまりに下衆で悪辣だ。多分ジョーは、当面自殺衝動からは遠のいていられるのではないか。怒りが自身の苦しみを忘れさせるのだ。ごく短い(ハヤカワ文庫にあるまじきぺらぺらさ)作品なのだが中身は濃密だ。あと、やっぱり金槌は強い。手斧も推したいが、入手しやすさ・携帯しやすさでは金槌に負けるな。

ビューティフル・デイ (ハヤカワ文庫NV)
ジョナサン エイムズ
早川書房
2018-05-19