ある罪により逃亡中のヘンリーと、拘留中のフェイの息子ネッド(リーアム・エイケン)は18歳になった。叔父サイモンを含め、家族の不幸の元凶である父ヘンリーに復讐しようと、ネッドは彼をさがしに旅に出る。サイモンの作品に執着している風変りな女性スーザンも同行することになる。監督はハル・ハートリー。2014年の作品。
 『ヘンリー・フール』三部作の3作目。出演者の加齢と同じスピードで物語が進んでいるので、この人変わらないなとか、こんなに大きくなって!とか、久しぶりに親戚に会ったような気分にもなる。本作、3部作の中では一番テンポが良く、タイトな作りになっていると思う(実際85分という短さだし)。
 父親殺しや世代を超えて受け継がれていく因がなど、ドストエフスキーのような様相を見せるが、ネッドの潔さがさわやかな後味を残す。ヘンリーは最後まで責任を取らない人、逃げる人として造形されている。しかし、グリム家は逃げない人たちなのだろう。彼らのふんばりと善良さで、ヘンリーの因果にようやく終止符が打たれるのだ。ラストがとてもきっぱりとして心を打つものだった。この人はこっち側に行くことに決めたんだなと深く納得するのだ。ハートリー監督の映画は、どれもラストショットがかっこよくて強く印象に残る。
 ヘンリーとスーザンの過去に遡っての諸々は、物議をかもしそうだけどやはり危ういと思う。ヘンリーは罰を受けており自分に責任があるという自覚もある(1作目ではなさそうだったけど・・・)という描写は織り込まれているとは言え、ロマンティックな要素を加味しすぎではないかな。

ヘンリー・フール・トリロジー
パーカー・ポージー
ポッシブル・フィルムズ
2017


はなしかわって [DVD]
D.J.メンデル
J.V.D.
2014-06-06