オーレ・トシュテンセン著、牧尾晴喜、リセ・スコウ、中村冬美訳
 ノルウェーで個人請負の大工業を営む著者が、ある屋根裏改築依頼の経緯を綴る「日記」エッセイ。
 見積もりから施主への引き渡しまで、本当に大工の仕事日記で専門用語、業界用語もぽんぽん出てくる。一応、著者による図解も掲載されているのだが、それでもこの用語はどの部分を指すのか、具体的にどのような構造になっているのか言葉による説明だけではわかりにくい所も。でも一つの仕事がどのように進んでいくかと言うレポートとして、またノルウェーの建設業界で生きる著者の生活や、ノルウェー社会のある側面を映し出すものとして、とても面白かった。やっぱり見積もりって大事だよなー!とか、顧客とどんな協力関係を築けるかで仕事のモチベーション(と現実的な作業量)が全然違うよなー!とか、他所の業界から見ても共感できるところは多々ある。何より、著者の真面目で誠実な人柄と仕事ぶりが窺えて、ユーモアのある語り口も好ましい。ノルウェーでも建設業界は厳しいらしく、人件費・材料費の削られ方は深刻な様子。低価格には低価格の理由が、それなりのお値段にはそれなりの理由があるのだという著者の主張はもっとも。とは言えイケアの家具を全否定しているわけではなく、適材適所と安全性との兼ね合いなのだ。労働の価格が安すぎるのは、やっぱり(労働者にとっても施主にとっても)危険なのね。

あるノルウェーの大工の日記
オーレ・トシュテンセン
エクスナレッジ
2017-09-29




街と山のあいだ
若菜晃子
アノニマ・スタジオ
2017-09-22