森川智之著
 1987年のデビュー以降、声優として第一線で活躍し続け、アニメの他に洋画吹替えの実績も多い著者が語る自身のお仕事歴と声優という職業。
 巻末の著者出演作一覧が圧巻のタイトル数。著作というより、聞き取りを文字起こししたような、敷居の低い読みやすさ。近年、人気声優による新書が複数リリースされているが、まさか岩波新書から出るとは・・・。内容は声優という職業に多少興味がある人にとっては特に新鮮味はないのだろうが、最近の業界傾向が垣間見える所、そして事務所社長でもある著者が考えるマネージメントの役割等に言及している所は面白い。最近の若手声優は声質、演技の方向性がわりと均一だなーという印象だったが、同業ベテランから見てもそうなんだな・・・。また洋画吹替え仕事が多い、何と言ってもトム・クルーズ声優である著者ならではのエピソードも。声優志望者がまず心がけることとして、「日本語をきちんと読み・喋れること」を挙げているのは盲点だった。普通のことすぎると思っていたけど、文章を正しく読む(文字通りの読む行為でもあり、文脈を理解する行為でもある)・全部の音をむらなく発声するのが必須だと言う。国語の勉強をちゃんとしろ!というとても基本的なアドバイスがあった。
 そして帝王森川といえばBLのお仕事だが、BL関連の章に掲載された写真に対する編集者註が他の章と比べて妙に饒舌、かつBLCDは編集者私物とわざわざ但し書きがあり、えっ岩波・・・ってなった。

声優 声の職人 (岩波新書)
森川 智之
岩波書店
2018-04-21


声優魂 (星海社新書)
大塚 明夫
講談社
2015-03-26