シーナ・カマル著、森嶋マリ訳
 バンクーバーにある探偵事務所の助手として、人探しを専門にするノラ。かつてはアルコール依存症に苦しみ、今も一見ホームレスのような暮らしをしている。ある日、ノラは裕福な夫婦から、失踪した15歳の娘を探してほしいと依頼される。その娘は、ノラがかつて産み、養子に出した子供だった。
 探偵事務所が入居しているビルの地下にこっそり間借りし、相棒の雌犬ウィスパー以外とは親密な関係を持たないノラ。非常に鋭い観察力で嘘を見抜くが、そのため自分が嘘をつくことにも強い抵抗がある。ストーリー展開がちょっと右往左往する(一盛り多くないかな?という気がする)のだが、彼女の独自のルールに基づいた行動に引き付けられた。ノラは、娘の存在を知らされ自身の過去を掘り起こさざるをえなくなっていく。封印した過去と再び向き合うというパターンのミステリ作品は多々あるが、本作はノラが過去から逃れようとしても逃れらない様がひしひしと苦しそう。過去が襲ってくるというのはこういうことか。苦しいから調査にも積極的ではないのだが、やがて後戻りできない領域に踏み込んでいく。彼女を突き動かすのは娘への愛とは少し違うだろう(責任感ではあるだろう)。過去への怒りや憎しみを振り切る為、自分の人生を再び掴む為のものに思えた。

喪失のブルース (ハーパーBOOKS)
シーナ カマル
ハーパーコリンズ・ ジャパン
2017-10-17


探偵は壊れた街で (創元推理文庫)
サラ・グラン
東京創元社
2015-04-13