タイラー・ディルツ著、安達眞弓訳
 全身をナイフで切り裂かれた女性の死体が発見された。地元高校の教師だったその女性に、刑事ダニーはなぜか見覚えがあるような気がした。目撃者も目ぼしい手がかりもない中、ダニーと相棒のジェンは捜査に奔走する。
 ダニーは中年、初老に近いくらいの年齢なのかと思って読んでいたら、全然若い!私より若い!嘘でしょ!これは年齢設定ミスマッチ等ではなく、ダニーはそのくらい疲れ切っているということなので、まずそこにショックを受けた。彼は過去のある事件によって深く傷つき、アルコール依存症に近い状態で、過去の記憶による悪夢に悩まされている。その苦しみが彼から活力や若々しさを奪っているのだ。過去の記憶、傷が表面化しなくても癒えておらず、じわじわと浸食し続けるしんどさ。この過去からの絶え間ない浸食による苦しみはは、被害者が味わっていたものと似ているのかもしれない。被害者の過去がまたきついのだ。どこの世界にもろくでなしがいるな!
 時に暴走しそうなダニーを支えるのが日系女性刑事のジェン。格闘技に秀でており、地元の子供たちに道場で稽古もつけている。恋愛要素はなく、お互いに対する思いやりのある関係な所がいい。地道な捜査による警察小説で、犯人の特定などなかなかまどろっこしいのだが、ダニーとジェンという人たちの物語として今後の伸びしろが期待できそう。