アントニオ・タブッキ著、須賀敦子訳
クジラたちと捕鯨手たちの関係の歴史、クジラを眺める男女の会話、居酒屋の歌手が辿るある女性の記憶等、海と島、そしてクジラを巡る連作短編集。
ごくごく小さな、しかし目を離し難い魅力のある素描を集めたような小品。素描といえば、どの短編もいつになく映像が目に浮かぶ作品だった。アソーレス諸島の小さな島々を巡るような、題名の通りの「断片」感がある。人間の視線、クジラの視線、そして島々そのものの視線が交錯するような、こちらの世界からあちらの世界へふっと視座がずれるような不思議な魅力。この定点に定まらない感じが浮遊感とはかなさを産んでいる。原題とは題名が異なるのだが、訳者あとがきを読むとこの邦題でよかったと思う。また文庫版で読んだのだが、堀江敏幸による解説は的確で理解の手助けになった(というか、解説を読んで作中のあまりに多くのものを見落としていたことに愕然としたね・・・!文学の素養が圧倒的に足りない・・・!)

島とクジラと女をめぐる断片 (河出文庫)
アントニオ タブッキ
河出書房新社
2018-03-03


新編 不穏の書、断章 (平凡社ライブラリー)
フェルナンド・ペソア
平凡社
2013-01-12