ジム・トンプスン著、小林宏明訳
 1920年、テキサス。大規模なパイプライン工事で職を得る為、放浪者、浮浪者、前科者等様々な人々が流れ込んでいた。ホーボーとしてこの地に流れ着いた21歳のトミーもその1人。かつて仕事で相棒だった30代の男フォア・トレイと再会しまた共に働くことになる。そして謎めいた女性キャロルと出合い、恋に落ちる。しかしフォア・トレイはキャロルには構うなとトミーを説得する。
 トンプスンはこういう作品も書いていたのかと新鮮に読んだ。ある犯罪が絡んだストーリーではあるものの、さほど血なまぐさくも強迫神経症ぽくもない。本作がはらむ焦燥感や落ち着きのなさは、語り手であるトミーの若さゆえのぐらつきや気短さから発せられるものだ。トミーが若くて未熟であることはそこかしこから感じられるし、トミー自身も言及する。本作はトミーが過去を思い返し語っている形式なので、あの時あんなことをしたのは自分が至らなかったからだ、という自省がからむのだ。しかしそこがみずみずしく、青春物語的な味わいになっている。若いトミーに対しある程度経験を積んだ過去のある男としてフォア・トレイが位置する。彼はトミーの兄貴分、導き手のような存在だが、トミーをどのように導きたいのか、彼は何をしに来たのかということがずっと伏せられている。本作の終わり方はある意味清々しいのだが、フォア・トレイが抱えるミステリ要素の端的な答えでもあるのだ。

天国の南
ジム・トンプスン
文遊社
2017-08-01




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