堀江敏幸著
 身近な出来事から時に文学、時に花、また自然科学に言及する随筆集。思考の飛距離の長さ、知識と知識の結びつきの幅広に毎回唸るし憧れる。またそれを直接的な書き方ではなく、中心を迂回し続けるような、一見して趣旨がわかりにくい(というか趣旨を定めないような)書き方なところに著者の芸風のぶれなさを感じる。「養蚕と書道教室」で描かれたある事態は、その迂回する芸風故に生じたものだろう。当事者には運が悪かった、お気の毒ですとしか言いようがないんだが・・・。そういう目的に向いた文章ではないですよね・・・。著者の文章ではなく引用部分で非常にインパクトがあったのは「恋の芽ばえる場所」で言及された白洲正子の青山二郎を表する文。平静なようでいて容赦がない。この文章だけでも白洲のすごさがよくわかる。著者の文章はその凄さを端的に提示しているのだ。

坂を見あげて (単行本)
堀江 敏幸
中央公論新社
2018-02-07






雪沼とその周辺 (新潮文庫)
堀江 敏幸
新潮社
2007-07-30