90歳のラッキー(ハリー・ディーン・スタントン)は一人で暮らしている。毎朝起きるとコーヒーを飲み、タバコをふかし、自己流のヨガをこなし、ダイナーに行ってコーヒーを飲みながらクロスワードパズルを解く。夜はバーに行ったりTVでクイズ番組を見たりする。ある日突然倒れたラッキーは、医者からは問題ないと言われたものの、自分に人生の終わりが近づいていると感じる。監督はジョン・キャロル・リンチ。
 ラッキーは同じような日課の毎日を繰り返しているのだが、妙に味わいがあって惹きつけられる。ラッキーは一人者だが、それが寂しい、悲しいというわけではないし、人生に失敗したと考えているわけでもないだろう。本作のキャッチコピーは「孤独と一人は、同じじゃない」だが、正確にはラッキーは一人だし孤独かもしれない、だがそれは自然なことでマイナスに考えることではない、といったところではないか。ラッキーは人間は生まれるときも死ぬときも一人だと明言する。彼には友人がおり、かつては恋人もいたようだが、それでも自分は自分であり、一人なのだ。それが彼にとっての自然だから、ペットの犬も小鳥も必要ない。
 とは言えラッキーは、他人が家族を持ったりペットを飼ったりすることを否定しない。ペットの亀が逃げ出して凹んでいる友人(デビッド・リンチが演じている)を周囲がからかっていると猛然と怒るし、雑貨店の女性が息子の誕生日なんだと言うと一緒に祝う。人が大切にしているものを茶化すべきではないという姿勢は一貫している。そこが、彼が偏屈だが周囲から好かれている一因でもあるのだろう。自分とは違うし理解できないかもしれないが、それはそれとして、という態度が見られるのだ。同性カップルに対する視線や弁護士とのやりとり等、若い頃はもっと偏屈で偏見に満ちていた(今でも偏見は持っているんだけど・・・)んだろうなという部分がちらほら見える。

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