レイフ・GW・ペーション著、久山葉子訳
 国家犯罪捜査局の元長官ラーシュ・ヨハンソンは、現役時代は凄腕で名をとどろかせていた。しかしある日、脳梗塞で倒れ体に麻痺が残り、リハビリ生活を余儀なくされる。文句ばかりの彼に、主治医がある相談を持ちかける。25年前に9歳の少女が暴行殺人に遭ったという未解決事件の犯人を、牧師だった父が懺悔の中で聞いたと言うのだ。しかしその事件は既に時効になっている。ヨハンソンは現役時代のつてをフル稼働させ、事件を再度洗い直し始める。
 いわゆるスリーピング・マーダーもの、かつ安楽椅子探偵的な面もある(とは言え自分で現場見に行ったりするので完全に安楽椅子探偵というわけではない)。過去の事件をチームの力で掘り起こしていく過程がとても面白かった。ヨハンソン自身の有能さと同時に、その有能さと人柄で培った人脈、そしてちょっと風変わりな兄弟(義理の弟含む)の力による捜査なので、やはり人脈(と資本)のある人は違うわ・・・有能な人のまわりには有能な人が集まるのね・・・というちょっと微妙な気分にもなってしまうのだが。ヨハンソンの元同僚や後輩だけでなく、ヘルパーの若い女性や「丁稚」の青年らもいいキャラクター。ヨハンソンは犯人について確信を持つが、時効という壁が立ちはだかる。法と正義、倫理のせめぎあいでヨハンソンは苦悩するが、更に自身の体との戦いにも苦しむ。この顛末は、ヨハンソンが自身の残り時間を察知していたからとも言えるのでは。

許されざる者 (創元推理文庫)
レイフ・GW・ペーション
東京創元社
2018-02-13