ウェイトレスをしながらクラブの歌手として働いているマリーナ(ダニエラ・ベガ)は、年上のパートナー・オルランド(フランシスコ・レジェス)と暮らしている。しかし突然オルランドが死亡。マリーナは彼の息子からアパートの立ち退きを迫られ、更に元妻や弟から葬儀には絶対に来るなときつく伝えられる。オルランドに最後の別れを告げたいマリーナは一人で抗い続ける。監督はセバスティアン・レリオ。第90回アカデミー賞外国語映画賞受賞作。
 オルランドの家族のマリーナに対する態度があまりにも失礼なので、見ている間中腹が立って腹が立ってしょうがなかった。元妻との会話から察するに、オルランドはマリーナと出会ったことがきっかけで家を出たらしいので、彼女に対して思う所あるというのは分かる。しかし彼女がトランスジェンダーであることをあげつらって存在を化け物扱いするというのは卑怯だ。憎むなら人として対等に憎め!彼らの態度が礼儀を欠いたものなのは、彼女を同じ土俵に立つ人間として見ていないからだろう。せめて外面だけでも礼節保っておけばいいのに、そういう努力すらしないのかとうんざりする。
 また、マリーナに対して個人的な因縁がないはずの刑事や医者もまた失礼だ。彼らの失礼さは個人というよりも組織、社会がマリーナに向けてくる失礼さのように思った。刑事は「この手のことはよくわかっている」という態度で博士号も持つ、いわば専門家を自認している。しかしマリーナとオルランドの関係をお金によるものだと決めつけていたり、一方的に約束を取り付けたりと、マリーナがどういう状況でどういう事情があるのかという個別の部分は理解しようとしない。「この手のこと」も千差万別なはずなのに、こういうものだからとひとくくりにする態度にはこれまたうんざりだ。当人は、無礼だという意識すらないんだろうけど。
 理不尽に向けられる無礼さや悪意に対して、マリーナは抵抗し続ける。彼女の好ましさは、この一人で抗い続ける自立した態度にある。自分が自分であるという姿勢が揺らがない。彼女の落ち着きは、ことあるごとに無礼さや悪意にさらされてきたということでもあるのかもしれないけど・・・。とは言え、常にタフでいられるわけではなく、深く傷つき疲れ切ってしまう時もある。オルランドの姿や、クラブでのミュージカル風シーンは、彼女が心を守り自身を勇気づける為の幻想であるように思える。それが周囲にも提示されるのが彼女にとっての歌うという行為なのではと。彼女が歌うシーンの解放感、浄化される感じが素晴らしい。

グロリアの青春 [DVD]
パウリーナ・ガルシア
オデッサ・エンタテインメント
2014-09-03


ボルベール <帰郷> Blu-ray
ペネロペ・クルス
TCエンタテインメント
2012-09-05