若竹七海著
 家出した女子高生ミチルを連れ戻す仕事に成功(しかし負傷)した私は、これがきっかけで失踪したミチルの同級生の捜索依頼も受ける。同級生・美和は無断で外泊するような娘ではないと言うのだ。美和の失踪を調べるうち、彼女の周囲の少女たちが他にも姿を消していることがわかる。
 私=葉村晶は探偵としてはそこそこ優秀なようだがすごく頭が切れるというわけではないし、人脈もそこそこ、体力は人並みだしお金にはそれほど余裕はないようだ。能力的にも人柄的にも、普通かつ至ってまともだからこそ、彼女が相対する人たちの異常さが際立っていく。少女の失踪を主軸として複数のトラブルに葉村は巻き込まれていくのだが、どの事件も自分より弱い相手を虐げたい・相手を支配し自分に力があると実感したいという欲望・悪意が根底にある。女性である葉村にもその悪意は向けられるのだ。葉村は窮地でパニックに陥ったり、理不尽や悪意に怒ることはあるが基本理性的。その理性が読者を引っ張っていき読みやすい。

悪いうさぎ (文春文庫)
若竹 七海
文藝春秋
2004-07-01


依頼人は死んだ (文春文庫)
若竹 七海
文藝春秋
2003-06-01