アフリカにある王国ワカンダは、絶大な力を秘めた鉱石ヴィブラニウムを利用し、密かに超文明を築いていた。ヴィブラニウムが悪用されることを防ぐ為、代々の国王の元、秘密を守ってきたのだ。父である前国王の死により王位を継承したティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)は、王位継承の儀式の中でブラックパンサーとしての超人的な力を得る。ヴィブラニウムの輸出をもくろむ武器商人のユリシーズ・クロウ(アンディ・サーキス)と彼に協力する元工作員エリック・キルモンガー(マイケル・B・ジョーダン)の存在を知り、国を守る為に元婚約者で諜報員のナキア(ルピア・ニョンゴ)、王国最強の戦士オコエ(ダナイ・グリラ)らと動き始めるが。監督はライアン・クーグラー。
 クーグラー監督の前作『クリード チャンプを継ぐ男』はザ・少年漫画!的な王道感が熱かったが、本作もなかなかの少年漫画感。アベンジャーズシリーズで既に登場しているブラックパンサー=ティ・チャラは大変クールでかっこよく陛下素敵!超頼もしい!と思っていたのだが、本作を見てみると、最初は意外と未熟で悩める青年という感じ。ナキアはじめ周囲の女性たち(ハーレム的でなく女性に囲まれているヒーローが登場するようになったんだなとも)の方がよっぽど頼もしい。そんなティ・チャラが国を守るとは、良き王になるとはどういうことなのかと葛藤し、前王を越えていく、ストレートな成長物語だ。なので、そんなに捻ったストーリー展開ではないしストーリーに限って言うとそれほど突出して面白いわけではない。アクションシーンも3Dを意識しているのかカメラがぐるぐる動き、目まぐるしくて期待していたほどではなかった。
 とは言え本作、今、現代のヒーロー映画で「国王」というキャラクターを使って何を物語るか、国を愛する・守るとはどういうことなのかと果敢に挑んでおり、そこがとても面白かった。ワカンダはヴィブラニウムの存在を秘密にし自国の中だけで使うことで、繁栄を保っていた。しかし諜報員として他諸国の紛争や困窮を知るナキアは、自国の利益を守るだけではだめだ、技術や資源を提供して世界が抱える困難の解決に取り組むべきではと訴える。ティ・チャラは歴代の王たちの方針に則り、自国の技術や資源を外に出すことには反対する。しかしキルモンガーの出現で、それが揺らいでいくのだ。キルモンガーのやり方は許されることではないが、彼の理念は実はナキアに近い。本作、ティ・チャラとキルモンガーが光と影になっているのではなく、ナキアとキルモンガーが光と影になっているようにも思えた。
 終盤でティ・チャラはあるスピーチをする。本作の物語は、このスピーチに説得力を持たせる為に紡がれてきたようなものだろう。このシーンが力を持っていれば、本作は成功なのだ。アメコミのヒーローである「国王」(そもそも正式な手続きに則って就任すれば正しい王と言えるのか?という要素も本作には含まれている。ワカンダの伝統的な王位継承システムは「王位継承者はそれなりに有能で倫理的」という大前提に基づいてるよね・・・)にこのスピーチをさせることに、本作の矜持が見られると思う。

ブラックパンサー・ザ・アルバム
オムニバス
ユニバーサル ミュージック
2018-02-28


ブラックパンサー (ShoPro Books)
レジナルド・ハドリン
小学館集英社プロダクション
2016-04-20