貧しい仕立て屋の息子として生まれたP・T・バーナムは、名家の令嬢チャリティ(ミシェル・ウィリアムズ)と駆け落ち同然の結婚をし、2人の娘に恵まれる。しかし仕事先は倒産、「珍しいもの」を集めた博物館を開設するも客は来ず、窮地に追い込まれる。そんな中バーナムは、「特徴」を持った人たちを集めショーを開くことを思いつく。ショーは大成功しバーナムは一躍金持ちになるが。監督はマイケル・グレイシー。
 オープニングどころか20世紀FOXのロゴの時点でいきなりかましてくるな!というフックの強さ。メインテーマでぐっと引き込み、更に子供時代、青年時代、結婚して子供が出来てショーを思いつく、というあたりまで一気に見せる。序盤にかなりのスピード感があり、突っ込む余地を与えない。本作、手放しで絶賛できない要素が結構あるのだが、音楽の良さと華やかさ、展開のスピード感、そしてヒュー・ジャックマンの魅力で無理矢理押し切られた感じがする。映画体験としてはすごく楽しいのだが、見ている間常にもやもやも感じる、しかし音楽とショーに魅せられ、もやもやは一旦脇においておいて・・・となる。良くできた音楽とダンスの有無を言わせない引力って、やっぱりすごいんだなと痛感した。他のことを保留にさせてしまう力はちょっと怖いようにも思う。
 本作のもやもやは、ショーの団員たちがどう見られるか、という所に生じる。バーナムが集める団員は「特徴のある人物」、要するに当時はフリークス扱いされたり、肌の色が違ったりということで偏見の目にさらされていた人たちだ。バーナムは「君たちを見てお客は喜ぶ」「きっと皆君たちを好きになる」と言うが、その喜びや好意は奇異なものに対するもの(バーナム自身「人は奇異なものが好き」と言うし)で、彼らを一個の人間として見るものではない。いくらもてはやされても、同等の人間扱いというわけではない。彼らの「仲間」であるバーナムですらそうなのだ。そういう見られ方に対して「This is me」と言い続けられるだろうかと悩んでしまった。人間を見世物として扱うことに(おそらく意図的にそうしているんだろうけど)ノリが軽すぎない?バーナムが基本クズだという描写はあるにせよ少年漫画的にいい話風にしすぎじゃない?ということがずっとひっかかる。しかし映画としてはすごく気分が上がって楽しいしメインテーマでは泣きそうになる。実に悩ましい。

バーナム博物館 (白水uブックス―海外小説の誘惑)
スティーヴン ミルハウザー
白水社
2002-08-01


富を築く技術 (フェニックスシリーズ)
P.T.バーナム
パンローリング
2013-12-14