南北戦争中のアメリカ南部。女子寄宿学校で暮らす7人の女性たちの元に、怪我をした北軍の兵士・マクバニー伍長(コリン・ファレル)が転がりこむ。女性たちは彼を敵軍の兵士だと警戒すると同時に、徐々に興味を覚えていく。原作はトーマス・カリナンの小説『The Beguiled』。監督はソフィア・コッポラ。なお原作小説は1971年に『白い肌の異常な夜』(ドン・シーゲル監督)として映画化されている。
 ソフィア・コッポラ監督の映画は、女性を(男性も)美しく撮るが、そこにセクシャルな臭いをあまり感じない。本作も、シチュエーション的にこれはエロいだろう!というシーンは結構あるのだが、どれもエロティックな形があるだけで、中身を伴わない。かなりあからさまにセックスしているよというシーンですら、さほど色っぽくはない。セクシーとされるものの形をなぞっているだけという印象だ。そこが見ていて気楽な所でもある。脅かされている感じがしないのだ。
 音楽といい映像といい、冒頭から不穏な雰囲気をかきたててくるのに不安にならないのも、そのせいだろう。物語上はマクバニーが屋敷に入り込み、エドウィナ(キルステン・ダンスト)を、ミス・マクバニー(ニコール・キッドマン)を、またアリシア(エル・ファニング)を性的な対象として見るわけだが、絵としてはあんまりそういう風に見えない。私がコリン・ファレルにあまりセクシーさを感じないというのもあるのかもしれないけど。
 本作で描かれる女性たちの共同体は、男性という異分子に揺さぶられるが、意外とほどけない。彼女が、あるいは彼女が同性たちを裏切るかのように見えるが、また引き戻される。彼女たちだけで完結した世界なのだ。時代背景は設定されているのに物語上は反映されない所も、箱庭的な雰囲気を強める。この時代のアメリカ南部だったら黒人の使用人がいる方が自然だと思うが、そういったものは現れない。他の兵士もちらりと姿を見せるだけで、遠くで大砲の音が響くにとどまる。世界から取り残されていくようにも見えた。この外側のなさがソフィア・コッポラの作家性なのかなと思う。

ビガイルド 欲望のめざめ
トーマス・カリナン
作品社
2017-12-26


白い肌の異常な夜 [DVD]
クリント・イーストウッド
キングレコード
2017-08-02