ポーランド、ワルシャワの岸辺に、人魚の姉妹シルバー(マルタ・マズレク)とゴールデン(ミハリーナ・オルシャンスカ)が現れる。歌手のクリシア(キンガ・プレイス)らにより地上に引き上げられた2人は、ナイトクラブでデュエットを披露するようになり人気者に。シルバーはベーシストのミーテク(ヤーコブ・ジェルシャル)と恋に落ちるが、ゴールデンは彼女に批判的だった。人魚にとって人間は食料なのだ。監督はアグニェシュカ・スモチンスカ。
 ポーランドから一風変わった映画がやってきた。レトロでちょっとキッチュな美術といいテクノポップ満載の音楽といい、1980年代ぽいなーと思っていたら本当に80年代が舞台だった。この時代を舞台にする必然性は全然ないと思われる(ポーランドの歴史文化を熟知していれば必然性がわかるのかもしれないが)のだが・・・。監督も脚本家も70年代生まれなので、彼女らにとってのノスタルジー、レトロなのだろうか。ともあれ、チープでちょっと悪趣味なかわいらしさで統一されており、見ているうちにクセになってくる。
 また、音楽を多用しているとは聞いていたけどミュージカル仕立てになっているとは知らなかった。人魚姉妹を引き上げて保護するクリシアは歌手だしバックバンドもついており、ステージ上で披露される音楽と、人魚姉妹の「語り」としての音楽が混在している。歌に合わせたダンス、群舞シーンもあるが、ミュージカルを見ているという感じはあまりしない。撮影の仕方がちょっともったいないのだ。群舞を俯瞰で見られるショットが案外少なく、変な所で見切れていて全体がどういう動きになっているのか十分に楽しめないは残念。ミュージカルは体の動きの要素も大きいのでもったいない。少人数でのシーンはそれなりに見られるので、大勢がいるシーンに慣れていないのかな?
 アンデルセンの人魚姫を下敷きにしているが、血と魚臭さが生々しく漂う。人魚たちの尾の大きさ、ぬめっとした質感は、分かりやすい可愛らしさ・セクシーさやブランド的な「少女」性を拒否しているようにも見える。「王子」との顛末も、あなたは許しても私は許さないよ!というある種のフェアさ、自己犠牲や純粋さの否定があってむしろ爽快。だって「王子」のやることは大分最低だからね・・・。

リザとキツネと恋する死者たち DVD
モーニカ・バルシャイ
オデッサ・エンタテインメント
2016-06-02



人魚姫 アンデルセン童話集 (2)
アンデルセン
新書館
1993-12-20