特集上映「未体験ゾーンの映画たち2018」にて鑑賞。1929年、ジョージ・ペンバートン・ブラッドリー・クーパー)はノースカロライナのグレート・スモーキー山脈の麓で製材所を経営していた。彼はある日、火事で家族を失い天涯孤独の身になったセリーナ(ジェニファー・ローレンス)と出会い恋に落ち、結婚した。元々製材所の娘として育ったセリーナはビジネスにも才覚を現していくが、ある事件が起きる。監督はスサンネ・ビア。
 ジョージの行動の悪気のない思慮の浅さ、無自覚な惨酷さや薄情さを、クーパーが上手に表している。こういう役柄にハマる(演技がしっかりしているし、多分顔つきの雰囲気もむいている。顔つきについては本人不本意かもしれないけど・・・)俳優だと思う。ハンサムで人懐っこさがあるけどちょっと無神経ぽい雰囲気が出ている。ジョージとしては悪気はないが、彼の行動のせいで周囲のパワーバランスが激変してしまう。彼の行動イコール悪というわけではないので、周囲も積極的に彼を責めることが出来ない(ある女性は存分に責めてしかるところだと思うが)のがまた辛いのだ。
 セリーナもジョージに翻弄されたように見えるが、彼女自身は翻弄されたという意識はないだろうし、翻弄されるようなタイプでもないように思える。彼女はタフで商売の才覚やリーダーシップを持ち合わせ、ジョージに対して仕事の上でもパートナーになっていく。実際彼女の言動は頼もしく作業員たちの信頼も得ていくのだが、ある事件により、彼女の精神はガタガタになっていく。正直、このガタガタになっていく原因が彼女が「女」であるという面に頼りすぎていないかという気がした。そんなステレオタイプな!とちょっと不満だった。
 とは言え彼女にとってジョージ(と彼と培うはずのもの)の存在はそれだけ大きく、彼女の傷と向き合いきれなかったジョージが事態を悪化させたと言える。この局面でのジョージの振る舞いは、本人なりに一生懸命なんだろうけどほんとにがっかりさせられる。捨てたはずのものに今更未練を見せて、今共に生きている人を見ないのだ。過去の幻想を追ったことで、ジョージ自身もまた足元を見誤ってしまったように思えた。

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