雲南省からバスと列車を乗り継ぎ、淅江省湖州へと向かう少年少女。湖州には多くの縫製工場があり、出稼ぎ労働者が80%を占めると言われる。この街にやってきて働く様々な人たちを見つめるドキュメンタリー。監督はワン・ビン。
 ヴェネチア国際映画祭でまさかの脚本賞を受賞した作品だが、なるほど出来すぎなくらい構成にドラマ感がある。ドキュメンタリーにも脚本(いわゆるドラマの脚本というよりも組み立て図みたいなものだろうが)はあるのだろうが、こういうエピソードを引き寄せる、またエピソードが出てくるまで粘れるのが監督の力なのかな。撮影期間は1~2年間だそうだが、出稼ぎに来た当時はいかにも田舎から出てきた風の不安げ15歳の少女だったシャオミンが、徐々に「こなれて」くる感じや、一緒に出てきた少年が過重労働に耐えられず故郷に帰っていく様は、それだけで一つのドラマのよう。
 また、DV気味の夫と妻の関係が、最初は一触即発みたいな感じだったのだが、後に再登場した時には何となく改善された雰囲気になっている所がとても面白かった。映し出されていない間に何があったんだ!自営の店を辞めて衣料品の搬出の仕事を夫婦でするようになったみたいなのだが、一緒に働くという状態が良かったのかなぁ。妻にケチだケチだと言われていた夫が、後々(不満を言いつつ)親戚に仕送りしているらしいのには笑ってしまった。
 画面に映し出されるどの人にも、それぞれの仕事があって生活があるんだという濃厚な空気が漂っている。とは言え、文字通り「起きて仕事して食事して寝る」生活なので、働くことがあまり好きでない私は見ていて辛くなってしまった。彼らは安い労働力として扱われており低賃金なので、仕事の量をこなさないと生活できない。自分は量をこなせないから・・・と自虐気味の男性の姿にはいたたまれなかった。安価な商品てこういう労働に支えられているんだよなと目の当たりにした気分になる。とは言え、ここでの仕事がだめだったら他へ移るまで、というひょうひょうとした雰囲気も漂っており、予想ほどの閉塞感はない。これもまた一つの人生、という諦念が感じられるからか。

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