北朝鮮の偽札工場から印刷用の原版が盗まれた。警官のイム・チョルリョン(ヒョンビン)は、事件の首謀者だった上司により仲間と妻を殺され、復讐に燃える。原版を秘密裡に取り戻すべくソウルに派遣されたチョルリョンは、殺人事件の共同捜査だと信じる刑事カン・ジンテ(ユ・ヘジン)と組まされる。ジンテも上司から、チョルリョンの動向を探れと命じられていた。監督はキム・ソンフン。
 オーソドックスなバディものの体で、背景も性格も正反対の2人が反目しつつも徐々に心を開いていくという展開もお約束通り。しかし王道を勢いよくやっており、活気がある。クールでスマートなチョルリョンと、おしゃべりでずんぐりとしたジンテの凸凹コンビはテンプレ的造形ではあるのだが(あとジンテの妻や娘など女性キャラクターが概ね書き割り的なのだが)、お約束はお約束として楽しく、生き生きとしている。
 撮影方法にしろ、ストーリー展開にしろ、下手に捻らずしっかりとしたストレートをちゃんと投げてくる感じ。アクションは銃撃戦、肉弾戦、カーアクションと幅広いが、やはりオーソドックスなことをちゃんとやっているという印象だった。現実の南北を巡る状況には解決の糸口も見えないわけだが、本作の雰囲気は至って明るく、ラストに至るまで軽快。深刻な現実もフィクションの素材として使っていく韓国映画の強さを見た感がある。
 アバン直後、チンピラをジンテが追っているシーンの映像といい音楽といい、昭和の(韓国映画に対して昭和っていうのも変だけど、ふた昔前くらいの感じ)刑事ドラマのようなのだが、これは狙っているんだろうなぁ。特に音楽がこのシーンだけ汗臭いのには笑ってしまった。ジンテのキャラクターを端的に表すシーンでもある。ちょっと野暮ったくコミカルなのだ。北朝鮮の警官であるチョルリョンの方がルックスといい立ち居振る舞いといいスマートで、かっこいいアクションはほぼ彼が担う。いくらなんでも無双すぎ!というシーンもあるのだが、それを含めて見応えがあった。

レッド・ファミリー [DVD]
キム・ユミ
ギャガ
2016-04-28


ハナ 奇跡の46日間 [DVD]
ハ・ジウォン
オデッサ・エンタテインメント
2014-05-02