新聞記者のシャオチー(カイザー・チュアン)は交通事故に遭い、買ったばかりの中古車を修理に出すハメに。しかし修理の際、その車は9年前にシャオチーが目撃した交通事故の被害者の持ち物だったことがわかる。9年前の事件に疑問を感じたシャオチーは真相究明に乗り出すが。監督はチェン・ウェイハオ。
 サブタイトルの通り、闇の濃いミステリ・サスペンス映画。映像の美しさのせいかどこか幻想的な味わいもあり、大変面白かった。情報の密度がかなり高く、序盤でちらりと出てきたものが後半の伏線に使われる等、目が離せない。
 「目撃者」という題名(原題通り)はとても上手い。誰が誰にとっての目撃者なのか、何を目撃したのかという謎を、幾重にも畳み掛けてくる。視線が何十にも重なっており、その主体が変わるごとに事件の様相ががらりと変わっていく。映画を観ている側にとっても、果たして自分が今まで見てきたものは何だったのか、と愕然とさせられていくのだ。
 物陰からのぞき見するようなショット、車のバックミラーなどへの映り込みなど、他者の視線を感じさせる演出が随所にちりばめられている。その「他者」が何者なのかわからずに不安が煽られていく。自分が見ている景色は見たままのものではなく、全く別の風景を見ている人がいるんじゃないかという予感を常にはらんでいるのだ。
 視線の主体が交代していくにつれ、事件は地獄めぐりの様相を見せてくる。なぜこうなった、という空しい問いが響き、それを呑みこんで更なる地獄を歩んでいくある人物の笑顔が恐ろしくも哀しい。

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