ジョー・ウォルトン著、茂木健訳
 1949年、マークからのプロポーズを機にパトリシアの世界はふたつに分岐した。マークと結婚した世界、結婚を断った世界、彼女は全く異なる人生を歩んでいく。どちらの人生が本当の彼女の人生なのか?
 パトリシアは、マークと結婚した場合もしなかった場合も、全く別のものではあるが喜びと悲しみ、そして子どもたちを得ていく。どちらがより良い、彼女に最適かなど読者にも判断できない(実際。どちらの人生も読んでいてすごく面白い!)。時間の不可逆性、一度に両方は生きられないという切なさが、彼女の人生が進むにつれ切実に迫ってくる。どちらの人生でも彼女は大きなものを得るが、同時に得られなかったもの、失ったものの大きさも迫ってくるのだ。生きていくことは、そういった「やむなし」感と付き合っていくことなんだなと。終盤のパトリシアはある意味、「やむなし」を否定しているとも思えるのだが。
 彼女が生きる2つの世界の歴史は、現実の(読者の)歴史とは少しずつ違う。その少し違う部分が読む側の心にひっかかりをつくっていく。もしかしたら第3のパトリシアがいて、その世界は読者が生きる世界と同一のものかもしれないと。

わたしの本当の子どもたち (創元SF文庫)
ジョー・ウォルトン
東京創元社
2017-08-31


図書室の魔法 上 (創元SF文庫)
ジョー・ウォルトン
東京創元社
2014-04-27