チャイナ・ミエヴィル著、日暮雅道・嶋田洋一・市田泉訳
 新しい広告やパフォーマンスとして定着した“爆発”を描く表題作をはじめ、ロンドン上空に氷山が出現する『ポリニア』、新しい形状の“死”が観測されるようになった『<新死>の条件』など短編28編を収録。
 ショートショート的なものも含むとは言え28編て多すぎないか?ミエヴィルの長編は練りに練って構築したという印象だけど、短編だとわりと走り書き(とか言うと怒られそうだけど・・・)的、イメージのスケッチ的な書き方のものもあって、これはこれで新鮮だった。映画予告編の脚本を模した作品もあり、ここからどのように膨らむんだろうと想像させる。ミエヴィル作品って具体的に描けば描くほど何を描いているのかわからなくなってくるところがあるな・・・。
 また、SFというよりもファンタジー、怪奇譚的なものが多いのは意外だった。バカンス先の田舎で奇妙な声を聞くようになるという『ゼッケン』はもろに呪いものホラーと言えるだろう。相手かまわず呪ってくるところが実にホラーだ。間借り人の様子がどこかおかしくなる『ウシャギ』も、呪術的な要素が色濃い。作品のクオリティがまちまちなのだが、『ポリニア』『<蜂>の皇太后』『祝祭のあと』あたりがバランスがいい。個人的に好きなのはこれコントだろ!と突っ込みたくなった『恐ろしい結末』、怪獣映画的な『コヴハイズ』。最後に収録された『デザイン』も端正で良い。そして漂うブロマンス感。




ジェイクをさがして (ハヤカワ文庫SF)
チャイナ ミエヴィル
早川書房
2010-06-30