イギリスの諜報機関キングスマンの拠点が、謎の組織の攻撃を受けて壊滅し、メンバーも次々消されていった。残されたのは一人前のエージェントとして活躍するようになったエグジー(タロン・エガートン)と技術担当のマーリン(マーク・ストロング)のみ。2人は同盟関係にあるアメリカの諜報機関ステイツマンに協力を求める。キングスマンを攻撃した組織は、、ポピー(ジュリアン・ムーア)率いる麻薬組織・ゴールデン・サークルだった。監督はマシュー・ヴォーン。
 小道具やキャラクターは相変わらず楽しいし、これはとっても萌えそう!というシチュエーションも多々あるのに、実際に見てみると今一つ気持ちは盛り上がらない、まあ退屈ではないけど・・・というのは前作と同じ(私にとって)。ある意味安定のマシュー・ヴォーン監督作だ。相変わらず悪趣味をおしゃれ感漂う見せ方にしているが、逆にイキってる感出てしまって鼻につく。ただ、音楽の使い方は相変わらず洒落がきいていて上手い。そこがまた鼻につくんだけど(笑)。最近「カントリー・ロード」が作中で流れる映画(『ローガン・ラッキー』とか)をよく見るけど、アメリカ映画界に郷愁の波が来ているのだろうか。
 前作の登場人物が本作でも連投しているが、その大半をとんでもない事態が襲う。ヴォーン監督は、キャラクターを立てた映画を撮っているようでいて、そうでもないなぁとしみじみ思った。キャラクターをあまり大事にしておらず(温存する、死なせないという意味ではなく、バックボーンや「こういう人」という部分はさほど重視していないという意味)、扱いが雑なように思う。魅力的なキャラクターが多いので正直勿体ない。また、ストーリー展開や伏線の処理も結構大雑把。あるシーン、あるシチュエーションへのこだわりはすごく感じるのだが。映画としては、あまり上手くないんじゃないかと思う。皮肉やブラックユーモアの面白さはあるものの、あくまで単品の「皮肉」「ブラックユーモア」としての面白さであって、映画全体の面白さというわけではない。
 前作はアメリカと闘う話だったが、今回はアメリカと協力、しかも前作で皆殺しにしたような層との共闘になるのが皮肉。キングスマンとステイツマンの組織としての顛末も、これが資本主義・・・って感じで皮肉だ。大英帝国賛歌みたいなシリーズだけど、それは幻だったってことか。
 なお、当然007を意識した作品ではあるが、エグジーは恋人(まさか本当に付き合っていたとは・・・)に誠実でハニートラップは仕掛けないというあたり、今の作品だなという印象。

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2016-07-06