月村了衛著
 新たな通信事業として、経産省と中国のフォン・コーポレーションが進める日中合同プロジェクト「クイアコン」に大きな疑惑が生じていた。特捜部は捜査一課、二課と合同で捜査に着手するが、クイアコン関係者が次々と殺されていく。予想をはるかに上回る事態に、沖津特捜部長は大きな決断を下す。
 異色の部署である特捜部は一課、二課からは白眼視され、警察内部の縄張り争いだけでなく検察や国税局との折衝も迫られる。向かうところ敵だらけという状況なのだが、本作では真の「敵」の巨大さ、チートさが徐々に姿を見せ始める。もう大変だよ!警察組織だけでなく各省庁「組織」というものの嫌な部分を見続けるようなシリーズになってきたなぁ。厚顔無恥な奴ばかりが出世し、いい思いをする世界なんておかしいだろう!という末端の叫びが響く。今回、特捜部以外の人たちも結構動くし機龍は活躍しないので、今までになく「警官」としての矜持が見られる。
 世界が変わってしまった感じ、「上の人」がこんなに厚顔無恥だとは思わなかったよ!という感じ、現実社会と呼応していて実にげんなりとします。しかし特捜部のこの先の闘い(小説としての落としどころも)が非常に厳しそう・・・。