映画の観賞本数が徐々に減るのと同時に、読書のスピードも下がってきた。これが加齢ということか。しかし、古典文学の面白さがちょっとづつわかってきたような気がする。そりゃあ生き残っているだけのことはあるよな!ベストには殆ど入れなかったけど(笑)、すこしずつ読み続けたい。なお以下の順位は限りなく順不同。

1.『夜の果て、東へ』ビル・ビバリー著、熊谷千寿訳
ノワール的、ビルドゥクスロマン的でありロードノベルでもある。デビュー作でこのクオリティか!という衝撃。とても好きなタイプの小説。

2.『フロスト始末(上、下)』R・D・ウイングフィールド著、芹澤惠訳
著者の死亡によりシリーズ最後の作品になってしまった。寂しい。

3.『その犬の歩むところ』ボストン・テラン著、田口俊樹訳
犬を通して描くアメリカの神話とでも言えばいいのか。一歩間違うと地獄めぐりになりそうなところ、ちゃんと希望を描くのが良い。

4.『シャム双子の秘密』エラリー・クイーン著、越前敏弥・北田恵理子訳
私、本作でクイーンが何を意図していたのかがやっとわかりましたよ!そしてなぜ名作本格ミステリなのか理解した!新訳ってやっぱり必要ねー。

5.『その雪と血を』ジョー・ネスボ著、鈴木恵訳
センチメンタルなノワール。夢なんて見るものじゃないのかもしれない。

6.『リラとわたし ナポリの物語Ⅰ』エレナ・フェッランテ著、飯田亮介訳
同性に対する憧れ、友情、そして羨望ともしかすると憎しみ。続編が楽しみ。

7.『コードネーム・ヴェリティ』エリザベス・ウェイン著、吉澤康子訳
これもまた女性同士の絆を描く作品だが、時代に翻弄される人たちのきらめきと必死さが胸を打つ。最後の「キスしてくれ、ハーディ」に泣く。

8.『羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季』ジェイムズ・リー・バンクス著、濱野大道訳
ある職業の仕事のやり方や暮らし方を記したノンフィクションであると同時に、著者個人の物語になっている点がとても面白かった。

9.『灯台へ』ヴァージニア・ウルフ著、御輿哲也訳
なるほどウルフは面白い!時間の圧縮・膨張のふり幅と、意外とこんな人現代でもいそうだという人物造形の細やかさ、女性たちへのまなざしに引き込まれた。

10.『おばあさん』ボジェナ・ニェムツォヴォー著、栗栖継訳
本作、私の母が子供頃に読んで好きだった作品をもう一度読みたいというので、題名も著者名もわからないままおぼろげな情報をたどり、ようやく入手に至ったという1冊。なので、作品の内容というよりも謎の作品の正体がやっとわかったぞー!という達成感のインパクト(笑)。こういう事情でもないと存在にすら気付かないままだった作品だけど、自然描写が美しく、意外と現代的な所もあり面白かった。



フロスト始末〈上〉 (創元推理文庫)
R・D・ウィングフィールド
東京創元社
2017-06-30


フロスト始末〈下〉 (創元推理文庫)
R・D・ウィングフィールド
東京創元社
2017-06-30


その犬の歩むところ (文春文庫)
ボストン テラン
文藝春秋
2017-06-08


シャム双子の秘密 (角川文庫)
エラリー・クイーン
KADOKAWA/角川書店
2014-10-25






コードネーム・ヴェリティ (創元推理文庫)
エリザベス・ウェイン
東京創元社
2017-03-18


羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季
ジェイムズ リーバンクス
早川書房
2017-01-24


灯台へ (岩波文庫)
ヴァージニア ウルフ
岩波書店
2004-12-16


おばあさん (岩波文庫 赤 772-1)
ニェムツォヴァー
岩波書店
1971-09-16