エレナ・フェッランテ著、飯田亮介訳
 リラが姿を消したと、彼女の息子から電話が入った。長年の友人である私の元に彼女がいるのではと疑ったのだ。リラと私は6才の時に出会い、私は彼女の個性と才能を羨みつつも憧れ、以来ずっと友人同士だった。
 アメリカとイタリアでミリオンセラーになったそうだが、確かに面白く納得。いわゆる派手で展開の速いエンターテイメント小説ではないが、「私」とリラが成長し変化していく、2人の関係も変わっていく様にぐいぐい読まされた。大きな物語の流れというよりも、「私」の内的な変化と外的な変化の軋轢、小さな緊張感のようなものに惹かれる。「私」が自分を取り囲む物事の様々な様相に気付いていくが、リラはその触媒のような存在でもあり、一番近い他者とも言える。そしてその様相が何を意味するものだったのか、成長するにつれ気付き、解釈が変わっていく過程にはどこか痛みもある。子供時代の火花のような強烈なきらめきは消えてしまう。しかし成長する、大人になるということは、また別の世界が見えてくるということでもあるのだ。
 「私」はリラの頭の良さや文才に憧れ、何とか彼女に追いつこうとする。しかしリラは、「私」が並ぼうとするとすぐに別のレベルに移動してしまう。友人と言っても近くて遠い。どんどん美しくなるリラは、やがて「私」とは別の世界を生きるようになる。一つの感情では表しきれない、その距離感の描き方が巧みだった。