故郷トコピージャから首都サンティアゴへ移住したホドロフスキー一家。父ハイメ(ブロンティス・ホドロフスキー)は商売に明け暮れ、息子アレハンドロ(アダン・ホドロフスキー)にも家業への参加を強いるが、アレハンドロは詩人としての道を歩みだす。監督はアレハンドロ・ホドロフスキー。
 『リアリティのダンス』の続編となる、ホドロフスキー監督の自伝的映画。父と少年時代の息子アレハンドロの物語だった前作から引き継がれ、今回は青年時代のアレハンドロが旅立つまでの物語となる。撮影はクリストファー・ドイル。色が鮮やかかつ透明感があり、ホドロフスキーのちょっとどろみのある作風を中和しているように思う。本作、映像にはっとするシーンがいくつもあった。カーニバルの群衆シーンは高揚感あり素晴らしい。同じ群衆シーンでもファシズムの予兆と不吉さ満載の行進シーンと、セットで本作を象徴する映像になっていると思う。
 冒頭、「書き割り」による過去の街が出現し、ハリボテの汽車が動き出す瞬間にはっとした。ああこれが映画だ!という感じがしたのだ。作りものである、しかし現実よりもより輪郭がくっきりしているというような。本作はホドロフスキーの実体験が元になってはいるのだろうが、あくまで自伝「的」なものであって、フィクションだ。ホドロフスキー個人の体験となった時点で、その出来事はホドロフスキー個人のフィルターを通したフィクションになっているとも言える。そのフィクションを映画として再構築したのが本作で、冒頭の過去の街の現れ方は、それを明瞭に表していると思う。
 自分の体験、人生を咀嚼し直し、再構築することはフィクションの持つ機能の一つだろう。本作では特に父親との関係に如実に現れている。母、あるいはアレハンドロのミューズであった女性たちとの関係は、彼にとって不可解ではあるが都合のいいものとしての側面が目立った。しかし、父親はコントロールの範疇外であり理解の糸口も見えない。最後のシーン、ホドロフスキーは実生活での父親との和解には至らなかったそうだが、だからこそこうせずにはいられなかったんだろうなという切実なものがあった。

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