2073年、人口過多と食糧不足に悩まされるヨーロッパ連邦は、厳格な一人っ子政策を発令、1人目以降の子供は親元から引きはがされて冷凍保存されるようになった。七つ子として生まれたが祖父(ウィレム・デフォー)に匿われ全員成人したセットマン姉妹は、週に一日ずつ外出し、1人の人物「カレン・セットマン」(ノオミ・ラパス)を演じて生活していた。しかしある日、「月曜日」が帰宅せず姿を消す。残された6人は月曜日を探すが。監督はトミー・ウィルコラ。
 ある事実が明らかになった時点で、失踪事件の真相は大体見当がついてしまう。ミステリとしてもサスペンスとしても割と大味だ。ただ、人口管理社会の世界設定が結構えぐく、思っていたよりもシリアスなトーンだった。政府による人口統制は非人道的だが、そうでもしないと現状の人口を社会は支えることができず、子孫の為の「豊かな世界」を残すことも難しい。どちらを選んでも出口なし!という惨酷さだ。ある人物の動機が明らかになると更にやりきれない。色々なものを両天秤にかけていく話なのだ。
 姉妹の祖父は、家族のあり方を一律に規定する全体主義的な政府のやり方に反旗を翻し、姉妹を密かに育てる。しかし7人が1人の人物を演じるというやり方は、姉妹にそれこそ家庭内での全体主義的な共同責任、一律であり「個人」ではないことを強いることになってしまう。個々が存在するために個を否定しなくてはならないのが皮肉だ。そこから「個」に立ち返る為の闘いを本作は描いているとも言える。
 7人姉妹を1人で演じるラパスが見事だ。1人で演じているから当然同じ顔、同じ姿なのに、全く別人に見える。衣装やメイクだけではなく、ちょっとした動きの違いで別人に見えるという部分が大きい。ラパスは日本でウケるような美人、可愛いルックスというわけではないが、顔つきに存在感があっていい。個でいられなくなった姉妹を個性の強い女優が演じるというあたりも面白かった。

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