冷戦末期、西側に極秘情報を渡そうとしていたMI6の諜報員が殺され、最高機密の行方がわからなくなった。MI6の諜報員ロレーン・ブロートン(シャーリーズ・セロン)は機密リストを奪還し、裏切り者の二重スパイを特定するという任務を命じられた。西ベルリンに赴いたロレーンは、現地エージェントのデヴィッド・パーシヴァル(ジェームズ・マカヴォイ)に接触する。監督はデヴィッド・リーチ。
 最近のいわゆる「アクションがすごい」(例えば本作監督のリーチが製作・共同監督を務めた『ジョン・ウィック』のような)は、アクション自体はすさまじいスピード、破壊力に見えても、そんなに痛そうには見えない場合が多いと思う。いちいち痣や切り傷、擦り傷まで見せたりしないし、そもそもなかなか死なない。しかし本作は、「アクションがすごい」ことに加えて、アクションにより受けるダメージが生々しく、かなり痛そうだ。いちいち痣は出来るし怪我をして血がにじむし、殴られたり高所から落ちたりしたら、すぐには動けない。怪我をしたらなかなか治らない、というのは普通のことなのだが、本作のような映画でそれをきちんと見せられると最早新鮮に見える。このくらいの打撃を加えられたらこくらいのダメージを受ける、という具体性があるのだ。
 また、ロレーンが女性である=同業の男性に比べると筋力が少ないという設定をふまえたアクション設計で、自分よりウェイトがある・腕力のある相手をどう倒すかという所も面白かった。フライパンやら椅子やらで戦い、双方ズタボロになっていく様は見ようによってはコミカルだが、ズタボロさ、ヨレヨレ加減(足元のふらつき方)に妙に生々しさがある。ロレーンは、非常に強いが無敵というわけではないのだ。原作がグラフィックノベルだというから、もっとマンガ的な無敵っぷりなのかと思っていたが、そこまでではない。しかし、そこが魅力になっている。傷と痣が残っていても、露出の高いドレスを堂々と着こなすあたりも素敵だった。彼女はそういう職業であり、そういう人なんだなとよくわかるシーンだったと思う。
 アクション以外の部分が意外と地味なスパイ映画になっているのも意外だった。青を基調に赤をアクセントにしたビジュアルはスタイリッシュ(ちょっと懐かしめの感じだけど)だが、話が案外泥臭い。泥臭いというよりも、あまり建て付けがうまくなく実際以上に込み入って見えてしまうと言った方がいいか。どの登場人物もずば抜けて聡明・計算高いというわけではなく、自分がやっていることが大きい図式の中でどのあたりのパーツになるのか読み切れていない感じ。その読み切れなさが、冷戦当時のスパイものっぽく哀愁漂う。ロレーンについても同様・・・なのだがこのラストだとなぁ・・・。一つ上の階層からの視線が入ってしまう気がする。
 なお、音楽のセレクトは素晴らしい。あの時代っぽさと今っぽさのさじ加減が抜群だと思う。終盤、ある曲が流れると、ああ時代が変わった!って気分になるところも説得力あった。

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寒い国から帰ってきたスパイ
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2013-01-25