辻山良雄著
 2016年、東京・荻窪に新刊書店「Title」を開業した著者。元はリブロの社員として各地の書店に勤務し、店舗運営、イベント企画などを担ってきたいわゆる名物書店員だった著者が、なぜ書店経営に踏み切り、どのような過程で店が出来上がってきたのかを綴る。
 著者は書店員を経て書店経営を始めたわけだが、書店以外でも、「自分の店」を始める時ってこういう感じなんだなと、大変面白かった。ある仕事のルポとしてはもちろん、今、自営の店をやっている人、これから始めたい人の参考にもなるのではないかと思う。なんと巻末に事業計画書と開店初年度の営業成績表も掲載するという太っ腹。特に事業計画書をあらかじめ作っておいたということで、銀行からの貸付にしろ不動産賃貸契約にしろ、有利になる部分が大きかったそうだ。本文の中でも具体的なお金の話が結構出てくるので、大体こういう感じなんだなというイメージがつかみやすいし参考になる(支払のタイミングのずらし方とか、出版業界ならではなのかもしれないけどなるほどなと。図書カードでの支払いがどういう扱いになっているのか、最近よく見るiPadを使ったレジシステムのコストはどのくらいかなど、色々新鮮)。著者はあくまで自分の経験として綴っているが、文体のごくごく抑えたトーンといい、客観性が高く読みやすい。言うまでもなく書店というジャンルは厳しい状況にある。その中で今、個人で出店するのはなぜか、「良い書店員」とはどんな存在か、本作を通して見えてくるように思う。
 なお、Titleの棚は見応えがある。読書好きならどこかしら訴えかけられるものがあると思うし、明らかに力のある書店員が作っているとわかる。近くにいらした方はぜひ立ち寄ってお買いものしてほしい。



善き書店員
木村俊介
ミシマ社
2013-11-13