篠原辰史著
 1892年にアメリカで誕生したトラクターは、人力によるものだった耕作を機械科、作物の大量生産を可能にした。トラクターはアメリカでは量産により、ソ連・ナチスドイツ・中国では国策により普及していく。しかし農民や宗教界からの拒絶や、化学肥料の大量使用、土壌の圧縮、多額のローン等新たな問題も生まれていった。農業用の機械が世界にどのような変化をもたらしたか、農民、国家、社会を通して解説する。
 サブタイトルの「人類の歴史を変えた」という言葉は決して大げさではないということがわかる。こなせる作業量が変わる→生産量が変わる→産業構造自体が変わるということなのだなと実感できる1冊。食料の生産量が変わるとこうも世界が変わるのかと。トラクターを通して、世界の近代化の過程が見える、正に「トラクターの世界史」なのだ。一口に世界史といっても、切り口は色々なんだなと新鮮だった。「トラクター」の部分に何が入っても、それが世界の一部である以上、ちゃんと世界史になるはずなんだよね。おお世界がつながっていく!というわくわく感を感じた。
 当初、機械での耕作など温かみがない!というアニミズム的精神論による、導入への強い抵抗があったそうなのだが、これはどの分野でも同じなんだなと面白かった。手書きの文字の方が温かみがある、人柄がわかる(からワープロ反対)というのと同じだもんな。


戦争と農業 (インターナショナル新書)
藤原 辰史
集英社インターナショナル
2017-10-06