高度な知能を得た猿=エイプたちと人類が全面戦争に突入して2年。エイプたちのリーダー、シーザー(アンディ・サーキス)は砦の奇襲を受け、妻子を殺される。砦を襲った軍のリーダー・大佐(ウッディ・ハレルソン)への復讐心に駆られ、シーザーは数名の仲間と共に大佐を追う。監督はマット・リーブス。
 『猿の惑星:創世記』、『猿の惑星:新世紀』に続く3作目で完結編。私は創世記も新世紀も見ていない(さらに言うと元祖『猿の惑星』も細部は記憶にない)のだが、本作単品でも設定はわかるし結構面白かった。もう少し短ければもっと良かったかなと思う。本作、かなり重厚な雰囲気がベースにあるので、所々で挿入されるコメディ的部分が浮いており、余分な部分に見えるのだ。
 このシリーズ、SFというよりも神話的な側面の方が強いんだなと本作を見て感じた。前2作はについてはわからないが、本作はエイプたちのエクソダスであり、建国神話だ。人類の話を猿に置き換えました、という感じ。シーザーの思考方法や内面は全く「人」としてのものなので、人類とは別の種の進化過程という感じには見えない。なので、エイプたちもこのまま進化を続けると人類と同じような道を辿るのでは、とも思える。シーザーを特権的な存在にしているのが明瞭な音声を使った言語の習得であり、人類がそれを失いつつあるというのも象徴的。しかし、人間と同じような言語の習得がエイプたちを進化の次の段階に推し進めるのだったら、やはり人類の別バージョンにすぎないのでは?ともやもやした。そういう部分のおおらかさというか、あまり細部を詰めていない感じは、やはり「神話」だからだろうなぁ。エイプたちの食糧事情とかもかなり気になったし・・・。
 シーザーの敵として立ちはだかる大佐が、分かりやすく悪人というわけではないところが、作品の厚みを加えている。大佐の造形は、コンラッドの小説『闇の奥』のクルツや、フランシス・フォード・コッポラ監督『地獄の黙示録』のカーツ大佐(そもそも『地獄の黙示録』は『闇の奥』を下敷きにしているので当然ではある)に通じるものがある。カリスマのあるイカれた人に見えるが、イカれた人なりの理論があってそこは筋道が通っている。ハレルソン、最近ちょいちょいいい味を出してくるが、本作の役はかなり怖かった。

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