エリック・マコーマック著、増田まもる訳
 全体主義的な体制下で、隠し部屋に幽閉された人々を査察して回りその「罪」が語られる表題作、巨大な溝が出現し触れるものすべてを消失させていく「刈り跡」、古典本格ミステリと思いきや不可思議な領域に突入していく「窓辺のエックハート」等、奇妙な味わいの20編を収録した短編集。
 表題作である女性が「吐き出す」シーンのインパクトが絶大でそこばっかり思い出してしまう。この作品で隠し部屋に収監されている人たちは、非常にオリジナリティがあるというか、想像力が豊かで突出した人たち。作中世界ではその突出が罪とされるのだ。他の作品でも、過剰なオリジナリティ、やりすぎな妄想力を発揮する人たちが登場し、世界を奇妙な方向にねじまげていく。でも当人にとってはねじまげたのではなく、それがその人にとっての自然な状態なのだ。自然であろうとするとこの世の規範から見たら不気味なもの、許されないものになる。しかし、この世に合わせようとすると自分にとっては耐え難く不自然。このどうしようもない感じが全編に満ちているように思った。とは言え悲痛というわけではなく、不気味なものは不気味なまま、それはそれとして、という冷めたスタンス。そもそも世界は不可解で不気味なものであり、規範や常識の方が疑わしいのだ。

隠し部屋を査察して (創元推理文庫)
エリック・マコーマック
東京創元社
2006-05-20


パラダイス・モーテル (創元ライブラリ)
エリック・マコーマック
東京創元社
2011-11-30