ウイリアム・アイリッシュ著、稲葉明雄訳
 町をさまよっていたヘンダースンは、バーで奇妙な帽子を被った女と出会い、気晴らしに彼女をレストランと劇場に誘う。お互いに名前も聞かずに別れたが、帰宅したヘンダースンを待っていたのは妻の死体と警官、そして殺人容疑だった。ヘンダースンはアリバイとしてバーの女の存在を主張するが、バーテン始め、誰もその女を覚えていないと言うのだ。
 本作、出だしの文章のかっこよさ(もとい気障さ)で有名だが、大どんでん返し系ミステリとして面白かったんだな・・・。実は以前に読みかけたものの頓挫していたことを半分くらい読んでから思い出した。なぜ頓挫したかというと、おそらく証人探しの流れがご都合主義的で強引に思えたからだろう。ただ、終盤になるとそのご都合主義込でなるほど!というサプライズが待っている。正直強引なことは強引なのだが、力技で成立させてしまっている。誰も自分の言うことを信じてくれない、しかも他人からの証言が自分の記憶をいちいち否定していくという悪夢のような設定と、死刑のタイムリミットが迫る中での証人探しというスリリングさで読ませる。プロットの力技感と文章のスタイリッシュさのミスマッチに味があった。ところで、当時の女性にとって帽子ってそんなに重要なファッションアイテムだったんですかね・・・。他人と同じ帽子を被るなんて屈辱的!というテンションがいまいちわからない。

幻の女 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 9-1))
ウイリアム・アイリッシュ
早川書房
1976-04-30

幻の女 [DVD]
フランチョット・トーン
ジュネス企画
2010-05-25