長年の夢だったミスコンで優勝したトリシャ・エチェバリア(パオロ・バレステロス)は、突然死してしまう。トリシャは生前、葬儀では毎日メイクを変えてくれと親友に頼んでいた。彼女は裕福な家庭の一人息子として生まれたが、トランスジェンダーであることを認めない父親に家を追い出され、自分らしく生きようとしてきたのだ。監督はジュン・ロブレス・ラナ。
 トリシャの人生(と葬儀)の様々な局面を行ったり来たりする、少々目まぐるしい構成。時間の流れ通りに進行する葬儀と、過去の様々な局面との行ったり来たりであれば、もう少し整理された印象になるのだろうが、葬儀のシーンも時系列通りじゃないんだよなー。記憶はそもそも秩序立っておらず芋づる式に呼び起されるものだというなら、この構成で間違いではないんだろうけど、ストーリーの見せ方としてはちょっともたついている。しかしそれが疵にならないくらい、大変面白かった。1人の人間が自分の人生を生きようとした物語として、ぐっとくる。
 トリシャの父親は彼女をあくまで「息子」として見ているので、彼女のセクシャリティには全く理解がない。彼女が死んだ際も男の体に「戻して」葬儀をしようとする為、トリシャの友人たちは猛反発する。姉は彼女にもう少し同情的だが、やはり理解はできない。また、トリシャはなぜか恋愛運が悪く、イケメンと付き合ってもすぐに浮気されたり相手が訳ありだったりする。肉親の愛とパートナーとの愛には恵まれない人生なのだ。
 しかし彼女には、それを補って有り余る友人たち、そして養女からの愛がある。子供の頃からの親友バーブ(クリスチャン・バブレス)はトリシャを励まし笑わせ、時に彼女の代わりに怒ったり闘ったりもする(ちょっとだけ登場するバーブの母親のおおらかさも素晴らしい)。手厳しく彼女にはっぱをかける“ママ”やトランスジェンダー仲間たち等、彼女の周囲には人が絶えない。恋愛は上手くいかないし血のつながった家族とは絶縁状態だが、トリシャはそれに代わるような愛し愛される人たちを獲得している。彼女は恋愛にしろ養子を迎える流れにしろ、愛することをためらわない勇気がある人なんだなとわかるのだ。それが、周囲に人を集めるのだろう。
 葬儀での日替わりメイクは見事で、確かに不謹慎かもしれないけどSNSで拡散したくなるなと笑ってしまった。有名人のそっくりメイクというコンセプトなのだが、確かにものによっては完成度高い。

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