長嶋有著
震災が起きた年の夏、その翌年、翌々年。マンモス大学の医務室に勤務する春菜、同僚のシングルマザー美里、謎めいた清掃員の神子、大学講師の布田やその教え子である遊里奈や素成夫ら、様々な人たちと「死」の交錯を描く群像劇。
「死」と言っても、芸能人など著名人の訃報であったり、知り合いの知り合いくらいの距離感のある人の訃報であったり、ごく身近な人の訃報であったりと、その距離感は様々だ。人の死は殆どの場合突然訪れる。当人にとっても他人にとっても脈絡なく生じる。だからショックだし混乱するのだ。そして、死んだ人の時間がそこで止まってしまうにもかかわらず、他の人の時間は死者にこだわりがあろうとなかろうと否応なしに進む。その強制的な進み方が、死者の関係者にとってはきつい、しかし同時に強制的であるから若干気が楽になってくるという面もある。題名は「もう生まれたくない」だけど、決してそういう否応なしに時間が流れる感じが、ある年のある時点からふっと次の年のある時点へ、中間を割愛して移行する章立てで強調されている。
相変わらず実在の固有名詞や個人名の使い方が上手い。本作の場合は過去のある時代、「死んだ」ものへのほのかな懐かしみ(といってもその対象と深い関係があるわけでもないのだが。そういう身勝手な郷愁ってあると思う)を感じさせる。

もう生まれたくない

長嶋 有
講談社
2017-06-29


問いのない答え (文春文庫)



長嶋 有
文藝春秋
2016-07-08