R・D・ウィングフィールド著、芹澤恵訳
 相変わらず人手不足であえぐデントン署。フロスト警部は少女の失踪事件、強姦事件、スーパーマーケットへの脅迫事件にバラバラ死体と、厄介な事件を次々と背負いこんでいた。一方、マレット署長は新たに着任したスキナー主任警部と組み、フロストを他所の署に移動させ厄介払いしようと画策していた。
 上下巻のボリュームだが滅法面白く、特に下巻に入ると一気に読みきってしまった。著者の急逝により、シリーズ最終作となった本作。フロスト警部は相変わらず下品だしだらしないしセクハラ発言は多いし、経費の水増し請求がバレて大変なことになる。ぱっと見ダメ人間的な振舞だが、実際の所仕事熱心で、ぼやきつつも大変なハードワーカー(むしろワーカホリックの傾向が強い)であるのも相変わらずだ。欠点が多い割に部下や同僚からは愛されているっぽいのは、彼には(マレットやスキナーと異なり)部下を思いやり彼らに対する責任は負うという姿勢があり、何より警官としての矜持を持ち続けているからだろう。例え周囲が自分のミスを責めなくても、警官である自分が自分のことを許せない、だから踏ん張り続けるのだという筋の通し方にはやはりぐっとくる。今回、フロスト警部は少々センチメンタルで、亡くなった妻のことを何度も回想する。フロスト夫妻の心が離れていく過程は、ありがちな話ではあるのだがだからこそやるせない。対称的にデントン署が今回抱える事件は陰惨な色が濃く、やりきれない展開も。ことなかれ主義で事件の現場に関してはわれ関せずのマレットですら、絶句するような事態も起きる。泥沼状態の中であがき続けるフロスト警部とデントン署の面々の奮闘にエールを送りたくなる。続きがもう読めないというのは寂しい限り。

フロスト始末〈上〉 (創元推理文庫)
R・D・ウィングフィールド
東京創元社
2017-06-30

フロスト始末〈下〉 (創元推理文庫)
R・D・ウィングフィールド
東京創元社
2017-06-30