ヴィリエ・ド・リラダン著、斎藤磯雄訳
 青年貴族エドワルドは、ヴィーナスのような肉体と完璧な美貌を持つアリシヤを恋人にしていた。しかし彼女の魂は卑俗で、エドワルドは苦悩する。彼の苦悩を知った発明家のエディソンは、人造人間ハダリーにアリシヤを写した肉体を与える。
 エディソンとエドワルドが語る女性論は、1886年に発表された小説、また異端の作家の作品だということを差し引いても(だって1870年代にイプセンやトルストイやドストエフスキーがいるし、同時代にはモーパッサンやゾラがいるのに・・・。まあリラダンはリアリズム的に人間の心理や社会を描いた文学には興味がなかったんだろうけど)、ちょっとミソジニーがひどいんじゃないかな・・・。エディソンが発明した電話の発展形のような通信機器や、彼の屋敷の仕掛け、ハダリーの「中身」の描写等、SF的なエッセンスは時代を先取りしている感がありさほど色あせていない(一つの様式美として生き残っている)が、ピュグマリオン的願望とアリシヤに対するdisに関しては、当然のことながら現代の視線で読むとかなりきつい。エドワルドは理想の女性として人造人間を手に入れるが、彼にとっての理想の女性というのは、あくまで自分が想定している範疇から出ない存在であり、自分の延長線上の存在と言える。どこまで行っても自分でしかなく、そこに他者は存在しない。人形愛というのならわかるが、中途半端に人格を欲しているのが性質悪い。貞淑で聡明であれ、しかし自分より聡明であるなというのがな・・・。アリシヤの肉体を愛しつつ精神を軽蔑するエドワルドの苦悩にも、肉欲なら肉欲でいいじゃん!と突っ込みたくなる。このあたりは、さすがに時代を超えるのは難しいだろう。そもそも、それはアリシヤのせいじゃなくて肉体に惹かれてやまない自分の問題だよね・・・。

未来のイヴ (創元ライブラリ)
ヴィリエ・ド・リラダン
東京創元社
1996-05-01


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株式会社コスミック出版
2012-03-26