カナダに妻子と暮らすトマス(ハビエル・カマラ)はスペインに住む長年の親友、フリアン(リカルド・ダリン)を突然訪ねる。フリアンは余命わずかと宣告され、治療を諦め身辺整理を始めたとフリアンの従妹パウラ(ドロシス・フォンシ)から聞いたのだ。フリアンはトマスと一緒に愛犬トルーマンの引き取り手を探し、アムステルダムに留学中の息子に会いに行く。2人の4日間を描く作品。監督はセスク・ゲイ。
 トマスとフリアンは長らく(おそらくトマスがカナダに移住してから)会っていなかったようだが、再会すると徐々に昔と変わらないであろうやりとりを始める。フリアンがぶつくさ言い、トマスが受け流すという関係性が確立しているようで、この2人は若い頃からずっとこの調子だったんだろうなと思わせる、深い部分での友達というのは、何年も直接会わなくてもやっぱり友達なのだと思う。ただ、この2人のように、自分の一部を相手に委ねられるかどうかというと、なかなかこの域にいくのは難しいなとも。最後のフリアンの行動は、(多分こうなるんだろうなという予感はずっとするものの)自分の一部を相手に渡す、自分の死後もそれが残るようにするということにほかならず、結構な重さだ。相手がそれに耐えうる人だと信じてやるわけだけど、信じられる側の責任も重い。
 フリアンは犬の引き取り手に会って回ったり、自分の葬式の手続きをしに行ったり、(自業自得なのだが)絶縁状態だった旧友に挨拶をしたりと自分の「始末」をつけていこうとする。彼はそういった作業を出来るくらいには自分の死期を受け入れているかのように見えるが、折に触れて、そんなことはないのだとわかってくる。特に葬儀社で説明を受けるが頭に入っていないような様子で、結局トマスが担当者の話を受けるという流れには、そりゃあそうだよあなとしみじみした。そこまで達観できないよなと。いくら「そのつもり」でいても、いざ具体的な話になるとすくんでしまう。
 なお、葬儀社の担当者が、「私の葬式です」と言われて一瞬止まるもののすぐ通常運転になるあたりは、プロの仕事!と妙に面白さがあった。フリアンが動揺しているのを察してトマスに話を振るあたりも、「普通」の振る舞いに徹している。普通に徹すると言う意味では、トマスの振る舞いも正に普通で、過度に心配したり干渉したりしない、平熱感がある。そう振る舞い続けるには結構な意思の力が必要ではないかと思う。フリアンにとっては、トマスの平熱感がありがたかったのではないか。

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