ごく普通の会社員、壱河光夫(淵上泰史)に1本の電話がかかってきた。発信元は高校の同級生で今はチンピラまがいの生活をしている市川光央(田中俊介)。光夫は高校時代、光央の「犬」として下僕扱いをされていた。光央は「女を殺した、なんとかしろ」と言う。数年ぶりで光央と再会した光夫は彼の共犯者になり、2人の関係は徐々に変化していく。原作は中村明日美子の同名漫画。監督・脚本は内田英治。
 根強いファンがいる漫画なり小説なりが原作の場合、あくまで原作に沿うのか映像作品として新たな解釈をするのか、さじ加減が難しい所だと思う。特に漫画原作の場合はビジュアルのイメージが既に固まっているから、どこまで原作のイメージに寄せるかという部分は活字原作よりもやりにくいだろう。ビジュアルイメージがかけ離れ過ぎたら原作ファンの反感をかう、かといって原作そっくりにすれば映画が面白くなるのかというとそうでもない。本作は、このあたりのどこを寄せてどこを寄せないか、という取捨選択が上手くいっていたように思う。漫画はあくまで原作、実写映画には実写映画としての見せ方があるという、当然と言えば当然のことがきちんとできているなという印象だった。脚本も内田監督が手がけているが、原作の咀嚼・再構成が上手くいっていると思う。
 光夫と光央の関係は、倒錯した主従関係でありつつ、時に主と従が逆転しそうな兆しも見せる。光央は傲慢で光夫を翻弄するが、どこか不安定で脆さも見える。ヤクザにもなりきれず、かといって気質に戻る気骨もない。彼の不遜さはその不遜さをぶつける光夫がいればこそだ。一方光夫は光央に翻弄されているようでありつつ、何でも従うことで逆に光央をじわじわ縛り付けているようにも見える。この反転し続ける共依存的な主従関係はBLの定番ではある(んですよ・・・)が、あえて関係性に名前をつけられないような演出にしているところにわかっている感がある。お互いに執着はあるが恋愛とも言い切れず、おそらく彼ら自身(特に光央は)も自分の行動が何を意味するのかよくわかっていない。あいまいで多面的な関係であるからこそ面白い。
 主演俳優2人が好演していた。わかりやすいルックスの良さではなく、ちょっとアクのある風貌の俳優を起用したのは正解だったのでは。特に光夫役の淵上は、冒頭のオフィスのシーンが大根役者っぽかったので大丈夫かな?と思ったのだが、後半でどんどん追い上げてきた感じ。また要所でベテラン俳優を起用して安定感を保っているので、割と安心して見られた。

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中村 明日美子
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2009-07-24




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