メイ・サートン著、武田尚子訳
アメリカの詩人・小説家である著者が、世間と距離を置き片田舎で一人暮らしをしていた時代の、約1年間に綴った日記。著者は60年代後半に同性愛者であることをカミングアウトしたが、そのため大学の職を追われ、更に父親を亡くし、失意の中にあった。そんな中で、自分を徹底的に見直す手がかりとして書かれた文章が本著ということになるのだろう。世間から離れた暮らしとは言え、仙人のように何かを悟ったという風ではなく、著者はしばしば癇癪をおこす(自分でも作中で言及しているが、どうもかっとしやすい性格だったようだ)し、頻繁にしょげる。そういう気分の浮き沈みや自分のみっともなさを(おそらく)ちゃんと記しているところに、作家としての強さ、冷静さがあるのだと思う。自分の思考、感情と著作に対する誠実な態度が随所から窺えるのだが、それ故に文章を書くことの苦しさも常にある。また、自著に対する書評が芳しくなく落ち込んだり、好評に気を良くしたりする様は意外だった。全然超然とした人ではないんだなと。著者は本著を執筆中、物理的に他人と距離を置いて孤独を確保していたわけだが、精神的にも、どんなに親しい人や愛する人であっても立ち入らせることができない領域がある。著者の生活や、時折言及される身近な人との軋轢からは、そういう領域の存在を感じた。他人には(なまじ親密であればあるほど)なかなか理解されにくいことなのかもしれないが。

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