ジュリア・ダール著、真崎義博訳
ブルックリンのスクラップ置き場で、全裸で髪をそり上げた女性の死体が見つかった。記者のレベッカは遺体が警察ではなく黒衣の男たちに引き渡され、検死もされていないらしいことに驚く。被害者は正統派ユダヤ教徒のコミュニティに所属するユダヤ教徒だった。レベッカは真相を探ろうとするが、閉鎖的なコミュニティの壁にぶつかる。
ユダヤ教徒のコミュニティの特異さや、その中で生きる女性たちの複雑な心情が描かれるものの、こういったコミュニティを全否定しているわけではない。外部からはわかりにくい安心感や支え合いの姿勢があることにも言及されている。とはいえ、女性にとっては生き方の選択肢が極端に少ない世界ではあるよな・・・。レベッカは記者としての気概で事件を追っているのはもちろんなのだが、実はもっとプライベートな理由がある。レベッカ自身がユダヤ系であり、ユダヤ教徒だった母親は彼女が幼い頃に家出をして以来音信不通なのだ。彼女の中では、死んだユダヤ人女性の背景を調べることが、自分の母親の背景を知ることに重ねられている。母親への愛憎をひきずりながら事件を追うレベッカの姿はどこか危うい。そんな彼女のルームメイトであるアイリスの、ほどよい距離感を保った寄り添い方が印象に残った。