モトゥヌイ島で生まれ育った少女モアナ(アウリー・クラバーリョ)は、いずれは村長である父親の跡を継ぐよう教えられ、外洋に出ることは禁じられてきた。ある時、島の作物に異変が起き、周囲の海から魚が姿を消した。かつて世界を生んだ女神テ・フィティの心が、伝説の英雄と言われたマウイ(ドウェイン・ジョンソン)に奪われて闇が生まれ1000年が経つ、その闇の影響だとモアナの祖母は教える。モアナはマウイを探し出し、テ・フィティの心を元に戻そうと、父親の反対を押し切り海に出る。監督はジョン・マスカー&ロン・クレメンツ。
 2D字幕で鑑賞。アニメーションとしての質は当然高く安心して見られる。マウイの入れ墨がちょっと懐かしいカートゥーンのように動き回る演出は素晴らしかった。また、海の底の世界がなぜかギラギラにドラッギーで、これはこれで愉快。ロード・オブ・ザ・リングの竜の巣を思い出してしまった・・・。また『マッドマックス 怒りのデスロード』へのオマージュがあると聞いていたが、なるほどこれか!と笑ってしまった。確かにオマージュ捧げたくなる、というか一度やってみたくなるシチュエーションだもんなぁ。
 マッドマックスオマージュがあるくらいなので、モアナはいわゆる「プリンセス」的な造形の少女ではない。ラプンツェルもアナもエルサも今までのプリンセスとはちょっと違う方向付けだったが、本作では更にその路線が進められ、むしろアンチプリンセス的な含みが持たされているように思う。モアナ自身「プリンセスではない(村長の娘だから)」と明言するし、ディズニープリンセスの「お約束」を揶揄するようなジョークもある。特にマスコット的動物の可愛くなさは、これはグッズを売る気がないということなのだろうかと心配になるくらい。
 モアナは早い段階で、次期村長になることが決められているが、それを嫌がっているわけではなく、むしろ積極的に引き受けようとしている。しかし同時に、海に惹きつけられてやまない。村も家族も愛しているし自分の仕事への意欲もあるが、海へ憧れはそれとは別物として、彼女を掻き立てていく。この造形がとてもいいなと思った。現状に不満足というわけではないが、どうしても他の世界に心が向かってしまう人というのは、一定数いるだろうし、周囲からは理解されにくいだろうなと思う。
 また、モアナは不得意なこともあるが出来ることも多い(村での仕事はよくこなしているみたいだし、学習意欲も高い)。加えて戦闘力もあるところも、行動的なヒロインとしてはポイントが高い。マウイとの関係に、性的な要素が薄く恋愛関係に発展しなさそうなところもいい。マウイはモアナに船を操る技術を教えるが、立場は対等であくまで「相棒」的だ。マウイはやはり、モアナとは別の世界の人で時々ひょこっと姿を現す存在なんじゃないかと思う。