池澤夏樹著
モームの名エッセイ「世界の十大小説」から60年。彼のセレクションはもちろん名作ばかりで現代でも広く読まれている。しかし、モームが選んだ小説は18世紀~19世紀、国はイギリス、ロシア、フランス、アメリカのもの。世界が大きく変化した現代には現代なりの十大小説が必要なのではないか。著者が選んだ10作品を、その背景と合わせて解説する新書。著者による「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」および同「日本文学全集」の副読本として読むと(本作で紹介されている作品のすべてが個人全集に含まれているわけではないが)、著者がどういう指針で作品選出したのか、文学にはどのような役割があると考えているのか、よりわかるのではないだろうか。その小説が誰によって語られているものなのか、何がそれを語らせるのかということが、その時代や国、世界の形を雄弁に伝える。一つの作品の中に様々な声がある、多数の視点から語りうるという所が、小説の強みではないかと思う。また、モームの時代は、まだ世界が(地理的に)限定されていたのだなともつくづく。よりさまざまな国、文化圏の小説が読めるようになったことは素晴らしいが、今の文学はそれが(自分が属している文化圏の)外部からどう見えるか、どういう関係か常に考えざるを得ないのかとも。